「書く」って楽しい!
洋上生活はちょうど半分の折り返し地点を迎えました。
最近はヨーロッパ区間から寄港地ラッシュが続いています。
それぞれに楽しい時間を過ごしていますが、先生が寄港地で親子に出会うと
「はやくほいくえんに行きたい」
「きょうは、こどものいえないの?」
なんて声もちらほら聞きます。(嬉しい!)
そう、親子で「地球一周の旅」がしたくて、ピースボートに申し込んだ方ばかりですが、3カ月の船旅が終わるころには
「(寄港地も良かったけど)子どもの家に出会えたことがこの旅の一番の収穫でした」
と話してくださる保護者、実はとても多いのです。
ピースボート地球一周の船旅洋上では、クルーズを通して10回程度の「休園日」をのぞく洋上ほぼ毎日、子どもの家を開園しています。
寄港地を夜までたっぷり楽しんだ翌日に登園する子どもたちは少し疲れも見えますが、自分たちの「仕事(※前回の記事参照)」 がしたくてたまらない様子で、子どもの家にやってきます。
さて。
日常生活・感覚・言語・数・文化の5つのコーナーのうち、今日は「言語」について紹介したいと思います。
今回の船旅がスタートしてからしばらくして、みんなで「子どもの家ポスト」を作りました。
「手紙を書く」→「ポストに投函する」→「大好きな誰かに手紙が届く」ことを体験できるように、実際のはがきのように切手を貼って、ポストに投函します。
本当は、日本にいる家族やお友達に宛てて手紙を書きたいという気持ちを応援するために用意した物ですが、実際には毎日会っている保育園内のお友達やお父さんお母さん、いつも遊んでくれる船内のお兄さんや、お姉さんに書いて投函するのが流行しています。(それも、またヨシ!! 笑)
ひらがなをしっかりと読めるけれど、まだきちんと書くことはできないしんちゃん(4歳)は「二色の移動50音」と言う平仮名が一文字づつカードになっている物を使って、日本で待っている「じーじ」に手紙を書きました。
まだ書けない子にも、表現したいという気持ちは十分にあります。
それを少しずつ応援するための教具が、モンテッソーリの環境にはたくさんあります。
今のしんちゃんには、移動50音がしっくりくるようです。
「よこはまでバイバイするとき、じーじ、ないていたんだよ」
と思い出しながら書きます。
過去には、その日お風邪で欠席していたお友達を気遣って、
気づいたらこんなメッセージを書いていた子もいました。
そんな様子を見ていたしょうご君(4歳)は、まずは、自分の名前を書く練習を始めました。
砂文字でなぞった後、小さい黒板に同じように書きます。
また違う日に、マス目に点線で書かれた自分の名前をゆっくりなぞって書きます。
「せりぐち、はママもおなじなまえだよ」
「せが難しいね」
「だんだん上手に書けるようになった」
などといいながら、繰り返し取り組んでいました。
りん君(6歳)は言葉を正しく読むための「カード合わせ」をやっています。
例えば 鳥は「とぶ」、蝶は「まう」、魚は「およぐ」など正しい動詞と名詞を合わせます。
途中
、「鳥はまう?蝶は飛ぶ?」
と迷い、すらすら出来ないもどかしさを感じながらもちょっとの困難性があることで、逆にやる気もかきたてられていた様子。
「もう一度やり直し!」
と言い、一から始めていました。
「小学校入学までは、文字は教えない方がいい」という考えかたから、「受験のために、徹底的に読み書きの基本を教えたい」という考え方までいろいろあります。
なにが正解かはわかりませんが、モンテッソーリでは
「その子が知りたいと思ったときが、はじめどき」
「大人が教えるのではなく、自分でやってみることができるように」
ということを基本に環境を整えています。
2歳で文字に関心を持つ子もいれば、実際に小学校に入るまでまったく関心がない子もいる。
それぞれのペースにあわせます。
子どもが、それぞれのペースで、取り組みたいものに、取り組んでいたいだけ、向き合っていられる。
それを可能にすると、大人には想像もつかなかった子どもたちの姿が浮かび上がってきます。
黙々と集中して自分の作業に取り組み、目は生き生きと輝いている子どもたち。
しばらく集中して取り組んだあと
「できた!」
と顔をあげた瞬間の表情、たまりません。
やりたいことに思う存分して、達成感を得た子どもは、なんだかぐっと落ち着いて、ひとまわりお兄さん(お姉さん)になったように見えます。
全体向けのカリキュラムをつくらず、一人ひとりに寄りそった見守り保育ができる環境ならではの贅沢な風景だなあと思います。
「静かにしなさい!」「走らないの!」と怒るのではなく、思わず静かになってしまうような、夢中で取り組める何かを用意する。
狭い部屋を走ることなんかよりもずっと面白いものを、環境に用意する。
大人の役割とは、そういうものでありたいですね。