「縫う」お仕事
今回は、目からウロコが落ちる「へ~、なるほど!」なお話です。
子どもたちが毎日夢中になって取り組む、糸と針を使って「縫う」おしごと。
それは小学生になって家庭科の授業で習うものじゃないの?
3歳や4歳で縫い物なんてちょっと早いんじゃないの?と思う人も多いと思います。
私もその一人でした。
でも、それが楽しくできちゃうのが子どもの家の素敵なところ!
子どもたちはこの「縫いさし」のお仕事が大好きで、毎日順番待ちなのです。
そもそも小さい子どもたちでも楽しく縫うことができるのはなぜなのか。
その秘密はモンテッソーリの教具にありました。
まず、「縫う=布」というイメージを当然のように持っていた私が初めに驚いたことは「紙を縫う」ということ。
色画用紙に絵が描いてあり、その線上を縫えるような工夫がされているのです。
それには「今日はどれにしようかな~。」と絵を選ぶ楽しさがあり、完成させる喜びもあります。
そして針を刺す前には自分で縫う箇所にあらかじめ穴をあけます。
この作業も楽しいですね~。
さて、最初の難関は「糸を適度な長さに切る」こと。
どれくらいの長さがあれば足りるのかというのは子どもにとって予想が難しいもの。
それでも、途中で足りなくなったら「あ!足りなかった。次は長くする!」と言いながら、だんだん適度な長さが分かっていくから素晴らしい。
続いての難関は「針に糸を通す」こと。
これは根気との戦いですが、「さきっちょなめてやるんだよ。」と大人のしていることをしっかり真似して、真剣な表情で針と糸を見つめる子どもたち。
以前はこの段階で大きなため息や諦めの声が聴こえることもありましたが(笑)、最近ではそんなことはほとんどなくなり、自分でできるようになった子どもたち。
時間がかかるからこそ自分でできた時の喜びも大きいですね。
続きまして「玉結び」。
糸の先端に輪をつくり結ぶというのは高度な技ですね。
実はこれの前段階として、刺繍糸より太くて扱いやすい毛糸を使って玉結びをするための教具もあるのです。
なんてよく考えられた教具なんだろう、と感心してしまいます。
もちろん「縫いさしをする前に毛糸で玉結びの練習しなさい。」なんて誰も言わないのに、子どもたちが自然にそれをやりたがるから不思議です。
一つひとつの教具に段階があって、まるでそれを知っているかのように
子どもたちが自分でやりたいことを選んでいく。
「教具が子どもを呼ぶ」という言葉を初めて聞いたとき、「まさに!」と感じました。
子どもたちは自分に今必要なものを本能的に分かっているように見えます。
そんなこんなで毛糸で玉結びを繰り返し楽しんだ子どもたちは、刺繍糸でも玉結びができるようになってきました。
そしてここまでくればあとはひたすら縫い進めるだけ。
たまに糸が引っ掛かることもありますが、どれだけ時間がかかっても途中でやめる子は誰もいません。
最近ではクロスステッチや布に縫うこと、ボタンつけなども楽しんでいる子どもたち。
大きい子たちがしていることに憧れて、次の日には必ずと言っていいほど他の子がやりたがります。
そうやって刺激を受けながら子どもたちは日々新しいことを学んでいます。
そして、毎日毎日繰り返すことで自分一人でできるようになっていきます。
外で走り回っている姿からは想像もつかないような集中力と根気を見せてくれる子どもたち。
ゆめちゃん(3歳)が一時間以上かけて一列分のクロスステッチを完成させた時の表情は、喜びと自信に満ちていました。
子どもにとって、何かに没頭できる時間と環境がどれだけ大事かということに日々気づかされます。
(もちろん大人にとっても、ですが・・・。)