アムステルダム「モンテッソーリ教育の原点を見つめて」
10月に入り、フランス・イギリス・ベルギーと回り、オランダのアムステルダムに寄港しました!
アムステルダムは人口70万人のオランダの首都であり、マリア・モンテッソーリさんが長年暮らしていた場所です。
イタリアに生まれた彼女が、戦争を逃れるようにしてスペイン、インドを経て晩年を暮らしたこの地には、しっかりとモンテッソーリの精神が受け継がれています。国際モンテッソーリ協会(AMI)の本部も、ここにあります。
アムステルダムは人口70万人の都市ですが、そこにモンテッソーリ小学校が20校あるそう。
なんと、小学校全体の10%以上がモンテッソーリスクールというから、ビックリです。
小学校だけでなく、幼稚園から高校まであるモンテッソーリスクールも、アムステルダムだけで3校もあります。
モンテッソーリ教育が小学校全体の10%もあるため、その新しい教育方法は公教育へもしっかり
影響しているといいます。
しかも、さまざまな「新しい教育」(モンテッソーリはもちろん、他にもシュタイナー、イエナプランなど)
に対して国の公的な補助があります。従来型の教育を行う公立の学校ではなく、こうした教育を選ん
だ親の子ども達は、無料でモンテッソーリスクールに通うことができます。
「無料で最高の教育を選べるなんて!」と驚く参加者達に対して、現地の先生は涼しい顔で、
「そうよね。
でも逆に、ここに長く住んでいると、子どものための教育を自分で選べない国があることのほうが
おかしいと感じるようになるのよ。なにより大事な子どもの教育について、選択肢がないなんてお
かしいでしょう?」と応えてくれました。
さて、今回の子ども推奨ツアーのタイトルは「モンテッソーリ教育の原点を見つめて」。
モンテッソーリ園を訪問したり、国際モンテッソーリ協会本部(AMI)に訪問するといった盛りだくさんのツアーでした。
6人の子どもたちと保護者の方、教育に関心のある方が参加されていたこのツアー。
今回はお客さんとしてツアーに参加されていた子どもの家の先生たちもいて、とってもアットホームな雰囲気でバスは出発しました。
子どもたちにとってはどの寄港地もワクワクですが、今回は子どもの家の先生たちもドキドキ、そわそわ・・・。AMIの本部に訪れることができること、また、世界中のモンテッソーリ教師を養成している「先生の中の先生」、ジュディ・オライオンさんにも会えることをとっても楽しみにしていました!!!
9月末の寄港地では半袖で過ごし強い日差しが照りつけて暑いと感じる気候でしたが、ヨーロッパに入り風が冷たく感じるようになってきました。今日のアムステルダムでも太陽が当たると暖かいですが陰に入ると寒く、厚手のコートが必要でした。
バスに乗ってまずは「国際モンテッソーリ協会(AMI)」の事務所に向かいます。
マリア・モンテッソーリさんはイタリアで初めて女性医師になった方です。1990年代初頭のローマで、劣悪な環境にいた「障がい児」の治療法を「教育」に見出し、そのことをきっかけに子ども中心の教育法を確立しました。モンテッソーリ教育は20世紀の初頭、欧米を中心に世界に広まった教育法です。
マリア・モンテッソーリさんが実際に使用していた書斎が残されているAMIの事務所。
ここに訪れることができるのはピースボートならでは!
先生たちはAMIに訪問できることを心待ちにしていた様子です。
AMIのオフィスがある場所はアムステルダムの中心地でトラムやバスが走る、綺麗な街並みの中にありました。
中に入るとスタッフの皆さんがあたたかく迎えいれてくれて、
『Welcome Peace Boat!!!』と子どもたちが描いた絵とともにみんなを迎え入れてくださいました!
この絵を見て、とってもほっこりしました~!
そして昼食をみんなでいただきました。
キッシュやサラダ、美味しいフルーツなどたくさんの料理を用意していただき、子どもも大人たちも大満足!
カットされていない丸ごとのリンゴを、5歳の男の子はナイフでリンゴを切ろうとしていました。
これは普段子どもの家でおやつの準備のときにリンゴをカットし、リンゴカッターで食べやすい大きさに切って食べている日々の活動が自然に出たのでしょうね。
さて、昼食後はAMIの教育活動や様々な活動をスライドの写真を見ながらお話を聞きました。
・人間の自然な発達をサポートすること
・子どもが社会で貢献する人物に育てることが世界平和に繋がる
この二つが、AMIの活動の目的だとおっしゃられていました。
また、アジアやアフリカなどの生活・教育環境の恵まれない地域でもサポート、教育者の養成にも力を入れているなど具体的な活動の話を聞くことができました。
スライドで出てきた写真に、普段子どもたちが使っている教具が写ると
「あっ!同じのあるー!」と5歳の男の子が発見!
モンテッソーリの教具は世界共通。
100年前に開発され、少しずつ改良を加えながら今も世界中で愛されています。医師だったマリア・モンテッソーリさんが子ども達を観察しぬいて考案した、世界共通の、子どもの発達に寄りそった教具なのです。
貴重なお話を聞かせて頂いたあとは、大人たちはAMIのオフィス内を見学し、モンテッソーリ女史の書斎も見学しました。
次に訪れたのはジャカランダトゥリー・スクールという場所。
ここは0歳から4歳の子どもたちが通う、国際モンテッソーリ協会公認のモンテッソーリスクール。
0歳児は保護者と一緒にやってきて、先生達と会話を楽しみながら子どもの育ちを応援する方法を学びます。
親教育にも力を入れるモンテッソーリスクールならではです。
週に2回、親子でクラスに参加し、たとえば、子どもたちがおやつを自分で作る実践をしている間に、親は自宅をどのようにモンテッソーリ教育仕様にセットアップできるかなどの講習を受けるそうです。
また、子どもとどのようにコミュニケーションを図るのか、ポジティブな話し方、「正す」のではなく「伝える」方法など様々なワークショップも行っていました。
ジャカランダトゥリー・スクールへ入ると、高い天井に大きな窓があり、木のぬくもりがありとてもあたたかみがある場所でした。
部屋に入ると早速子どもたちはお仕事に夢中。
普段から慣れ親しんだお仕事をする子もいれば、初めて見るお仕事に興味をもっている子も。
また見学させて頂いたクラスではハムスターの飼育も環境のなかでされていました。
ケージの中を覗いて興味津々。
「可愛いね~」と3歳の女の子。
「ハムスターの名前は何ですか?」と6歳の男の子。
お仕事を楽しんで過ごす子どもたち。
先生から環境の話やジャカランダトゥリー・スクールの活動を聞く大人たち。
短い時間ではありましたが、実際に環境を見ながらお話を聞くことができ、とても素敵な時間を過ごすことができました。
また訪問した際に、一人ひとりにくださった缶バッチ。こそには
『BE MY GUIDE
I DON’T NEED
A SERVANT
OR A BOSS』
“召使いやBOSSはいりません 私をガイドしてください”
と、子どもの心からの願いを言葉にした、ジャカランダトゥリー・スクールの理念が書かれており、感銘を受けました。
さて、ジャカランダトゥリー・スクールを後にし、次に訪れたのは‘アンネ・フランク’家。
アンネの日記は有名でご存知の方も多いと思いますが、アンネ・フランクも実はモンテッソーリ教育をうけていました。
ナチスの迫害から逃れるためにアンネ・フランク一家が実際に住んでいた隠れ家がアムステルダムの旧市街にそのまま残されており、あの有名な本棚の裏側にある隠れ家への階段などを実際に見ることができました。
今回はモンテッソーリ教育にたくさんふれ、国際モンテッソーリ協会(AMI)の多岐にわたる活動内容を知り、新たな発見が多かった一日となりました。
新学期が始まり忙しい時期にも関わらず、あたたかく受け入れてくださった皆さまに本当に感謝です。ありがとうございました!
追記:アムステルダム翌日から、CASAクラスではアンネ・フランクさんの事が子どもにも分かりやすく書かれている本が環境の中に置いてありました。
その本を7歳の女の子が見つけて、一時間ほど集中して読んでいたそうです。
そして「この本、すっごくおもしろいね~」と担任に言いにきたそうです!
子どもにもアンネ・フランクさんがちょっと近い存在になったようですね!
(斉藤裕子)