洋上からの報告(1):1歳半のはすみちゃんと「自尊心」

第3回「ピースボート子どもの家」、洋上からの報告の最初の主役は、
子どもたちの中で最年少、1歳半!で地球一周の航海中の、はすみちゃんです。

(※子どもの家の対象年齢は2歳からとしていますが、まだ小さいはすみちゃんだけは
「午前保育だけ」というご理解をご両親から得て、3歳のお姉ちゃんと一緒に参加しています。)

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1歳半は、手が自分の思う通りに動くことを発見し、自由自在に使いこなせるようになろうと一生懸命な時期。
手首をひねって瓶のふたをあける、柔らかいパンをつぶさないように加減して持つなど、
少し大きくなれば、考えることもなくできる手の動きも、1歳半にとってはまだ試行錯誤の世界です。

はすみちゃんも、船に乗ったころは両腕をまるでバットのようにブンブン振り回し、
1歳半ならではの「壊し屋さん」として活躍していました!

でも、1歳半の小さな子どもだって、環境が整えば落ち着いて好きなことに取り組むことができるんです。

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いちばん右がはすみちゃん

子どもにとって、いちばんの先生は周りのお友達。
はすみちゃんも、5歳のお兄さんお姉さんも一緒に過ごす異年齢保育の環境の中で、
他の子が夢中になって取り組んでいるものを興味深そうに眺め、
乗船して1週間もたたない頃から少しずつ変化が見られるようになりました。

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1歳半なりの微細な手の動きを少しずつ学んでいるのです。

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はすみちゃんの成長の主役は、もちろん彼女自身ですが、そのサポーターは先生たちです。

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五十嵐先生(↑写真左)は、まず、さりげなく、はすみちゃんに「コイン落とし」を紹介しました。
「コインを落とす→ポトン!と音がする」ことに興味を持ったはすみちゃんは、もう夢中。
どうやったらコインが缶に落ちるのか、研究者のような真剣な表情で、自分の手首をひねり、指の向きを変え、
何度も何度も繰り返していました。

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「コイン落とし」。
空き缶にふたをして、そのふたにちょうどコインの側面が入る大きさの穴をつくるだけの簡単なものですが、
世界中にいる1歳半が興味を持つ活動です。

はすみちゃんも、最初のころは入口が横に向いていないと入れることができませんでしたが、
1週間くらいすると「手首をひねる」ということができるようになり、入口がどの方向を向いていても
コインを落とすことが出来るようになりました。コインが落ちる時の音も楽しいようで、
ニコニコして「ぽっとん、ぽっとん」と言いながら繰り返しています。

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「ようじおとし」の活動も用意しました!

余談:
その様子を見ていた先生たちは、はすみちゃんは「ぱっちん、ぱっちん」と大きなスナップをはずす活動も
好きに違いない、と最初の寄港地アモイで必死になってスナップボタンを探しました。
どのお店でも見当たらず、諦めかけていたところで、道端でミシンの縫物をしている女性に出会いました。
英語を話さない彼女に、身振り手振りで『大きなスナップボタンはないか』と聞くと、
女性は自分の作業道具が入っている引き出しから5つ、スナップボタンを出してくれました。
ようやく出会えたスナップボタンに大感激した先生たちは「ありがとう!」と去ろうとしましたが、

「いやいや、ひとつ2元だよ」と身振りで商売する女性。いやー、さすがです。
物価にしてはちょっと高いような気もしましたが、はすみちゃんのために!と購入し、
さっそく大きなスナップをつけたり外したりする教材を作った先生たちでした。
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乗船から1カ月たったいま、はすみちゃんはスナップをはずして、つけて、の活動が大好きです。
キャップの開け閉め(手首をひねる動き)もはすみちゃんお気に入りのコーナーに用意しています。

『思う通りに手を動かすことができる』ことは、人間の自尊心の基本です。
しばらく集中して、思う存分繰り返して、「できた!」を感じたあとの子どもたちの嬉しそうな顔と言ったら。
先生たちが心をこめて用意した環境にあるもの、はすみちゃんは夢中になって、
自分で選び、繰り返しを続けています。

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1歳半の子、3歳の子、5歳の子では、それぞれの発達段階と興味に応じて、夢中になる対象が違います。
主人公はあくまでも子どもたちで、大人は黒子であるべきです。
大人が教室の真ん中にいて、子どもたち全員に一方的に何かを「教える」のは、本当の教育ではありません。

一人ひとりの子どもを観察し、それぞれの子どもにピッタリの環境を用意する。
それが「ピースボート子どもの家」の先生たちの仕事ですが、今回の先生たちもそのエキスパートで、子どもたちも幸せです。

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さて、はすみちゃんの話の続きです。
「ピースボート子どもの家」では、「自分でできた」を大切にしています。
小さなことに聞こえるかもしれませんが、「歩けるようになった子どもは、自分で歩く」ことも、
当然、とても大切に考えています。時間はかかっても、自分の足で一歩一歩歩いて行くのが大切です。

全長200メートル以上ある大きな船の9階にある「子どもの家」から、
お昼ご飯を食べるレストラン(4階)に向かうのだって、1歳半のはすみちゃんには大冒険です。

はすみちゃんのおかげで、お兄さん、お姉さんたちも「待つ」ことが上手になりました。
「がんばって」「ゆっくりゆっくり」と声援を送り、ときには手をつないであげながら、
はすみちゃんの次の一歩を応援します。

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歩けるようになり、今いちばん動き回りたい時期のはすみちゃん。
先生たちも、その発達段階を最大限に尊重しています。

「子どもの家」にいる他のお友達の様子が落ち着いているときには、
ミニー先生ははすみちゃんを誘い、外にお散歩に行くようにしています。

船には、海を一望しながらデッキをぐるりと一周できる全長200メートルのトラックがあり、
「子どもの家」目の前にはスポーツデッキもあるのです。

歩きたい、動きたい、と思う。その気持ちを尊重し、見守ってくれる人がいる。
自分の足で歩く。目的地に到着し、「ついたー!」と一緒に喜ぶ。
小さな自尊心は、こんなところからも育ちます。

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自分で歩いて到着したレストラン!
クルーズのはじめのころはいつも「だっこだっこー」とご両親に手を伸ばして抱かれていたはすみちゃんは、
最近は船内を一人で歩いていることが多いです。これも大切な「自立」の一歩。
船内の大人がみんなで子どもたちを見守る環境ならではの、自由な「育ち」の応援です。

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そんなはすちゃん、ここ数日は指さしをしてモノの名称を聞くようになってきました。
指をさされたものを「これはボールだよ、ボール」と伝えると、
「うんうん」とうなずいたり「る」と繰り返してみたりしています。

おやつの用意のときなども「コップ持ってきてくれたの?ありがとう」と言うと、嬉しそうに笑い、「っぷ」と言葉を真似して繰り返しています。
日々成長しているはすみちゃん。

言葉の爆発期も近いかもしれませんね。
第3回「ピースボート子どもの家」紹介、第1回目は1歳半のはすみちゃんを紹介しましたが、次回は、5歳の優しいお兄さん、チャタくんを紹介 したいと思います。
お楽しみに。

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