レンちゃん(4歳)の「時間」を見とおす力
今回の船報告は、第2回「ピースボート子どもの家」にコーディネーターとして乗船している
アユこと新藤あゆみちゃんと、その娘レンちゃん(4歳)のちょっとした成長物語です。
小さな子どもにとって、船は大きな大きな新世界。
ママが大好きなレンちゃんは、ママの職場であるピースボートに乗ることをとても楽しみにしていました。
ところが、いざ乗船してみると、れんちゃんが戸惑うことがたくさんありました。
参加者として乗船している他のお友達は、「子どもの家」の時間以外はずっと大好きな家族と一緒です。
でも、仕事で乗船しているお母さんと一緒に参加したれんちゃんは、
お母さんの朝ミーティングにあわせて早起きして、
朝ご飯のあとに他の子よりも1時間早くお母さんにバイバイします。
毎日の「子どもの家」終了後もしばらくお母さんの仕事が終わるのを待っています。
寄港地だって、ほとんどの場合、お母さんではなく、シッターをしてくれるカニちゃん先生と一緒です。
毎日、大好きなおやつの時間が終わると、お友達のお母さん、お父さんが次々に迎えに来ます。
それを横目に、一人だけ先生と長い時間を一緒に過ごすれんちゃん。
最初しばらくは「ママ、いっちゃやだ~!」「れんも一緒にいく~!」と大泣きが続くこともありました。
そして、そんなレンちゃんと向き合って、スタッフである自分と母である自分の狭間で揺れて、
とても苦しいアユがいました。
そんなれんちゃんが、「劇的に変化した」! というアユからの報告を受けて、今回の記事を書いています。
働くママ必見の、目から鱗のアイディア、「お絵かきスケジュール」を紹介しますね。
毎朝、どうしてもママを離れたがらなかったレンちゃんが笑顔で「バイバイ」をしてくれるようになった秘密。
それは、子どもの家の久子先生のアドバイスによる「子ども目線のスケジュール作成」の時間でした。
アユは毎日、前日の夜に、翌日の仕事スケジュールがわかったらレンちゃんに伝えます。
それを、大人側の都合で「レンはかにちゃんと一緒にいてね」と伝えることをやめてみることから変化ははじまりました。
同じスケジュールを話すのでも、
「この時間になったらママと一緒だよ。だけど、この時間はママお仕事だからかにちゃんと一緒に居てね。
その時レンは何して遊びたい?」というように、レンちゃんの立場からスケジュールを描いてみせるようにしてみたのです。
ある晩の会話は、たとえばこんな様子です。
「レンとママのスケジュール!!」(テンションを上げて盛り上がる)
6:30 おきる、着替える(と言いながら書く)
「起きたら次は何する?着替えようか。どんなお洋服着る?」(とイラストを描いてみる)
7:00 ママとレストラン、ウッシーもいっしょ(と言いながら書く)
「なに食べる?」「ふりかけご飯とのり!」(とレンちゃんが答えたらイラストを描いてみる)
7:30 ママはおしごと
「子どもの家が終わったあとたくさん遊べるように、ここでお仕事終わらせてくるからね~。レンは誰と待ってる?」
「ウッシー!」(れんちゃん)
8:00 レンはママといっしょ
「やったぁ~、ママと1時間一緒にいられるね。ハートマーク書こうか!いくつ書く?」「いっぱい!」「じゃ5個書くね」
9:00 子どもの家
「ママもお仕事、レンもお仕事。明日はどんなお仕事する?」「縫いさしと、折り紙!」(と答えたらイラストを描いてみる)
「そのあとは、みんなでお昼寝だよね」(寝顔を書く)
15:30 波へいにお迎え
「今日は一番にお迎え行けるかな~」(ハートマークを描く)
「ママと一緒にケーキ食べる?」「うん!」(カップとケーキの絵を描く)
16:00 レンとママはいっしょにPセン
「くんちも一緒だよ。レンも「チーン」って慣らしてお仕事手伝ってくれる?(呼び鈴のこと)」 という時もあれば、
「ママは、短い針が5のところに来るまではお仕事だから、かにちゃんが遊んでくれるんだって。なにしか遊ぼっか」
「探検ごっこ!」
17:00 レンはママといっしょ
「やったぁ~」(ハートマークを描く)、「何して遊ぶ?」「風船!」(と言ったら風船の絵を描く)
17:30 レストラン
「誰と一緒に食べる?」「しんちゃんと、ふみやくんと・・・」(お友達の名前を書く)
・・・という風にして、夜、寝る前の時間を過ごします。
れんちゃんにとっては、お母さんと2人っきりでお話しして、お絵かきをする大切な時間。
翌日は自分の登園バッグの中にこの紙を大切に入れて、歩きます。
毎晩、会話を楽しみながらど翌日をどう過ごすか、というスケジュールをつくるようになってから、
れんちゃん自身が時間の予測が出来るようになり、不安が解消されました。
子どもの家が終わって1時間たてばママが帰ってくることもわかったほか、
本人の中で1日の順序が立て、イメージが出来るようになったのでした。
大人だって、どこか知らない場所にでかけていって、次に何が起こるのかわからないままに
場が進行していくと「どうなってるの?!」って不安に思ったり、イライラしたりするものです。
それが子どもなら、なおさらのこと。
でも子どもだって、きちんと順序立てて説明すれば、判断と予測ができるし、待つことだって大丈夫なのです。
・・・そうは思っていても、それを「お絵かきスケジュール」のかたちで紙にして持ち歩く、
ということは思いつきませんでした。 さすが、ベテランの久子先生。
アユから送ってもらった「お絵かきスケジュール」を見ながら、思ったこと。
時間の部分を時計の絵にしたら、今のれんちゃんならあっさり、時計も読めるようになるかもしれない。
毎晩家族全員分のおはしを並べることから「3つ」「4つ」を覚えていくのと同じように、
生きる知恵として自然に「数」を覚えていけたら最高だもんね。
母の日のプレゼント。カーネーションの包み紙は、子どもたちがマーブリングで和紙を染めました。
れんちゃんにとって「レンが保育園に行くあいだ、ママはお仕事」とわりきることができる東京での毎日は
快適かもしれません。でも、東京ではママの働く姿を見ることは少なかったと思います。
子どもが豊かな環境に身を置き、目で見て、体で感じ取った経験は
大きくなってからの想像力や知性、忍耐力にもつながります。
でも、単純に豊かな環境を用意するだけではもったいない。
子どもが自ら進んで、積極的に能動的に新しい環境に挑戦することで、学びの幅はぐっと広がります。
こうして頑張るお母さんの姿を間近に見ながら、「お絵かきスケジュール」の魔法で
自ら進んで「待つ」こと、「先を見通す」ことを覚えつつあるれんちゃんは
きっとものすごくたくましくなって帰国するでしょう。
みんなに支えられながら仕事と子育てを両立させているアユ自身だって、まだまだ「ママ4歳」。
親子の地球一周を通して、きっと一段と素敵なお母さんになって帰国するでしょう。
そんなアユ親子をいつも支えてくれている先生たち、どうもありがとうございます。
私も、お休みの日にお仕事が入ってしまう日は「お絵かきスケジュール!」やってみよう。