ありったけのアリガトウ
引き続きオランダ寄港のお話です。
オランダの1日を満喫して船に戻ってからは、大切な大切なお友だちとのお別れが待っています。
そう、ないきくんです。
ないきくんは元々“幼稚園がお休みの夏休みの間だけ”ということで、横浜からアムステルダムまでの乗船でした。
誰もがないきくんやお母さんのあさみさんといっしょに最後まで地球一周をしたいと思っていたけれど、残念ながら今日でないきくん親子は下船してしまいます。
オランダ、アムステルダム寄港の前夜には、ないきくんの卒園式が行われました。
とっても利発で、元気で、みんなのムードメーカーだったないきくん。
ないきくんにはプレゼントだということは内緒で、
この日のためにみんなで大きな大きなピースボートのちぎり絵を作っていました。
「たこきゅう(船の赤いファンネルをみんなはこう呼びます)、大きくかこう」
「船のしろいところのPeace Boatって英語、ニコかけるよ!!」
「ぼくも!!」
声をかけあいながら、何日もかけてみんなで作った大事な船の絵。
それをプレゼントされたないきくん、とても嬉しそうでした。
楽しかったモンテッソーリ園訪問を終えて船に戻ると、帰船リミットの17時まであとわずか。
帰船リミットの時間が、同時にないきくんたちが船から下りなければならない時間です。
「ないきくんまたね!!」「元気でね!!」とたくさんのお友だちや大人たちに声をかけられながら、ないきくんとあさみさんは船を下りていきました。
船を下りられない私たちは、送迎デッキに出ます。
にこちゃんみりちゃんのお母さん、ともみさんの手作りの『ないきくん、あさみさん、またあおうね』という横断幕を掲げながら、ないきくんたちに向けて精一杯の声を送ります。
「ないきく~ん!!げんきでね~!!」
「ないきく~ん!!」
声は聞こえているはずなのに、ないきくんはなかなかこちらを向いてくれません。
それでも呼び続けていると「ふうぇ~ん!!!!!」という、泣き声とともに、肩を震わせながら泣いているないきくんの姿が目に飛び込んできました。
無理もありません。
船を降りた岸壁からは、子どもの家のお友だちがお見送りしてくれている姿が見えるのです。
子どもにとってはなんとなくぼんやりしている別れが、この瞬間にはっきりと目に見えるのだと思います。
ないきくんの嗚咽は激しくなるばかり。
その涙につられ、大人たちも号泣でした。
しばらくすると、ないきくんも、『ありがとう』と大きく書いた紙を手に持って見せてくれました。
少し落ち着いたないきくん、大きな声で「ありがとう!!」と叫んでくれました。
「ないきく~ん!!」「ありがとう~!!」船のみんなも、一生懸命応えます。
先生たちもお母さんたちも、また号泣。
にこちゃん、ももちゃんも感極まって「うわ~ん!!」と泣いています。
出港するまでの約1時間、ずっと声を掛け合い、手を振り合って時間が流れていきました。
18時になり、いよいよ出港です。
出港曲の『Boom!!』が流れ、岸壁から船がゆっくりと動き出します。
「ないきく~ん!!にほんであおうね~!!」
「ようちえんがんばってね~!!」
いっそう大きな声で、ないきくんに向けて声をかけます。
みんなおなかの中からありったけの声を出しています。
1歳のこあくんも「ないき!!」と呼んだり、いつもは大きな声を出さないとおるくんも、「ないきくんまたね!!」と声を出して手を振っています。
陸との距離がどんどん広がっていき、陸と船とを結んでいた紙テープがプツンとちぎれました。
それでもないきくんは紙テープを拾いながら、船を追いかけてくれます。
港の端の端まで来てくれて、小さく見えなくなるまで、ないきくんもあさみさんも手を振り続けてくれました。
飛行機や電車の旅とはまた違う別れを、子どもたちも感じたのではないかと思います。
ないきくんとあさみさん、日本で元気でね。
また横浜に帰ったときに会いましょう!!