洋上レポート(4):ベトナム『ストリートチルドレンのいま』

初の寄港地、ベトナム・ダナンです。

昨日子どもの家では、みんなで世界地図の前に集まって、ベトナムのお話をしました。国旗や民族衣装のアオザイを紹介し、そして今、船でベトナムに向かっていることをお話して、地図の中のベトナムに赤いシールを貼ります。子どもたちの顔は真剣そのもの。大きい子達は特に、ベトナムに行くのをとっても楽しみにしていました。

寄港地での過ごし方は家族でそれぞれですが、今回は、保育士同行のオプショナルツアー、『ストリートチルドレンのいま』というツアーに参加されたご家族の様子を紹介します!!

まず朝は8時にブロードウェイに集合。子どもの家の登園時間が9時なので、みんな1時間早起きしたはず…それでも子どもたちは元気いっぱい!!タオルや水筒を詰めたリュックを背負い、帽子を被って準備は万端です。心なしか、みんな高揚した表情をしています。

さっそく船を下りると、東南アジアらしい、むっと重みのある暑い空気に包まれます。暑いねぇと言いながらバスに乗り込み、ダナンの街へ繰り出します。バスに乗るなり、4歳のとおるくんはじっと窓の外を眺めます。

実はとおるくん、ベトナムに来るのをすご~く楽しみにしていました。子どもの家が始まってまだ一週間しか経っていなく、慣れていないためか口数も少ないとおるくんですが、昨日先生がみんなに、「明日はどこに行くか知ってる?」と問いかけると、いちばんに「ベトナム!!」と応えてくれました。

先日も、世界の国々に興味を示していたとおるくん。ある時とおるくんが窓の外を見ながら、「ここはどこだろう。」とつぶやきました。窓の外は一面の海。どこか分からなくなるのは大人も同じです。

そこでとおるくんと世界地図の前に行き、「横浜はここだよね。とおるくんが今乗っているお船は横浜を出発してベトナムに向かってるから、こうやって海を渡っていくんだよ。今はこのあたりだから、周りは全部海なんだよ。」と説明していきます。うんうん、とうなずきながら、「次はここに行って…ここの狭いところ(スエズ運河)を通って、ここも通って…このあたりで誕生日。ここ(南アメリカ)には隕石が落ちたんだよ」などと続きをたくさんお話してくれます。

地図の周りにある国旗にも目をつけ、「ここ(シンガポール)は行く。」とつぶやき、他にもないか、一つ一つ確かめていきます。「ここもだ」と指差したのは、コロンビア!!す…すごい!!よく覚えています。「トルコも行くよ。トルコは…これだ。」トルコの国旗もばっちり覚えています。

コロンビアの国旗などを自分で探して指さすとおるくん(4歳)

コロンビアの国旗などを自分で探して指さすとおるくん(4歳)

近くでじっくり地図や国旗を見入ったあと、少し後ろに下がって地図の全体をながめ、「こんなにたくさん世界がある…!!」とポツリ。そうしてとおるくんがキラキラした目で見つめていた世界地図の国に、今実際に訪れているのです!!

とおるくん、窓から街を凝視しながら、「でんせんがちがう」とつぶやき ました。ベトナムでは電線は、高さが違うところに3本平行に連なっていました。とおるくんがいつも見ている日本の電線とは、違いがあることに気づいたよう です。その後もどんどん違いを見つけていきます。「木もちがう」「あとガソリンスタンドもちがう」「くるまもちがう」「ミキサー車はいっしょ」子どもたち は小さな違いを見つける天才です。どんどん見つけて尽きません。

そうこうしているうちに、最初の目的地、職業訓練施設に到着です。

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ここで子どもたちは、刺繍などの専門職を身につけ、彼(女)らが作った製品を売って収入を得、自立をめざします。建物の中では女の子たちが刺繍の練習をしていて、センターの職員の方がここはどういうところなのか、どういう子どもたちがいるのかなどを説明してくれます。

ベトナムには、現在約5万人のストリートチルドレンがいます。

「ストリートチルドレン」と一口で言っても、親から離れて路上生活をおくる子、親のいない子、家の経済的事情でこのセンターにいる子など、その事情はさまざまです。

「海や山で観光をすることもできたろうに、子どもたちに会いに来てくれてありがとう。
今日聞くこと、出会う子どもたちのことを決して忘れないでください」

という所長さんから、職業訓練所では、どんな背景の子どもたちがどんな学びを得ているかという話を聞きました。

もともとは町の中でゴミを拾って生きてきた子もいるという話、その子たちが「家」を得て生き生きと勉強していることなど、大人たちにはとっても興味のある話でも、子どもにとってはとっても退屈だったりします。

そこで、保育士同行ツアーの本領発揮!!退屈しだした子どもたちには、同行している保育士が、画用紙やクレヨンを取り出して、お絵かきに誘います。とおるくんが赤いクレヨンを使って描き始めたのは、なんとベトナムの国旗!!国旗が完成してからとおるくんが指差した先には、風にはためく本物のベトナムの国旗が。もともと国旗を知っていたベトナムという国を実際に訪れ、そこで本物のベトナムの国旗に出会うというのは、子どもたちにとっては素晴らしい実体験です。とおるくん、自分はベトナムに来ているんだということを、強く感じていたはずです。

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お絵かき以外にも、外には子どもたちを引き付けるものがたくさんあります。6歳のないきくんが見つけてきたのは、さやえんどうの特大版のような、茶色い植物のさやです。振ってみると中で実が転がり、マラカスのようなすてきな音がします。しばらくさやを振利まわしてみたりしていましたが、「中に何が入っているんだろう」と気になり、鞘を割ってみることになりました。

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とっても硬い鞘を割ると、中からはずらりと並んだ種がたくさんでてきました!!「わぁ~いっぱいある~」と嬉しそうに種を並べます。種を取り出した後のさやの形も面白く、みんなで回して触ってみます。

ベトナムのお姉さんに聞いてみたところ、これはフール(ねむの木?)という赤い花を咲かせる木になるそうです。ベトナムのほとんどの学校にはこの木があり、夏にこの赤い花が咲くと、夏休みが近いことを感じて嬉しくなると話してくれました。

他にも木の葉を拾ってみたり、落ちている木の実を拾ってみたり、船ではなかなか触れられない自然物に、存分に触れている子どもたちでした。

大人たちの施設見学も終わり、施設の所長さんに感謝の気持ちを込めてご挨拶をします。このときには子どもたちが大活躍!!ないきくん、あらたくん、とおるくんが、所長さんにプレゼントを渡すという、大役を果たしてくれました!!小さな訪問者に、施設の方や学生さんも、顔をほころばせていました。

さて次は、5歳から18歳までの子どもたちが暮らす、共生施設を訪れます。経済的な理由から親といっしょに暮らせない子どもや、親を亡くしてしまった孤児たちが暮らす施設ですが、そんなバックグラウンドは子どもたちには関係なし!!折り紙やバルーンを使っていっしょに遊びだすと、言葉は通じなくても心は通います。

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りほちゃんは、最初は敷地内にあるブランコで遊んでいました。でもグルーバルーン(われないシャボン玉)をベトナムのお姉さんたちが作っているのに気づくと、そこに近寄っていきます。するとすぐに、ホスピタリティあふれるベトナムの子どもたちは、りほちゃんにストローを渡してくれたり、バルーンのチューブを渡してくれたり、小さいりほちゃんの世話を焼いてくれます。うまく風船ができなくても、みんなで笑いあい、和やかな空気が流れます。

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ないきくんもおりがみやバルーンで遊んだ後、お姉さんたちに連れられて共同部屋に遊びに行きました。他の参加者の女の子が、片言の英語でなんとか会話をしていましたが、ないきくんは体当たりでの交流がスタートです!!ないきくんが窓の外を眺めていると、「ナイキ!!ナイキ!!」と名前を覚えてくれたお姉さんたちが呼んでくれます。ジェスチャーでいっしょに写真を撮ろうと言ってくれました。

しかしないきくんは、照れちゃったのか、終始カメラマンに徹していました(笑)「撮るよ~!!」と元気な掛け声をかけてくれ、たくさん写真を撮ってくれました。

どんどんカメラが楽しくなり、ドアップの写真を撮りたがるないきくんと、嫌だと言いながらも楽しそうな女の子

どんどんカメラが楽しくなり、ドアップの写真を撮りたがるないきくんと、嫌だと言いながらも楽しそうな女の子

こんなに笑いあって遊んだのです!!ないきくんの心に、楽しかったベトナムが刻まれたことでしょう。

とおるくんは、さっきのお絵かきタイムに、ベトナムのお友だちに絵を渡そうと、とおるくんの大好きな恐竜の絵を描いていました。ベトナムと日本の国旗、そしてローマ字で『TORU』と名前も描いています。実は少し人見知りのとおるくん、交流の時間は、庭の隅にあったヒヨコの小屋に目を奪われていました。庭の葉っぱをちぎっては、ヒヨコにえさをあげるとおるくん。炎天下の中でも構わず、じっとヒヨコを観察しています。とおるくんに「さっき描いた絵、渡す?」と聞くと、はっと思い出したように駆け出し、絵をベトナムの方に渡すことができました。

恐竜の大好きなとおるくん(4歳)。子どもの家でもトレーシングペーパーを使って写し絵をしています

恐竜の大好きなとおるくん(4歳)。子どもの家でもトレーシングペーパーを使って写し絵をしています

照れてしまったのか、またすぐにヒヨコのところに戻ってしまったとおるくんですが、ベトナムの子どもたちはとおるくんの絵に大喜び!こんなに大きく日本の国旗の絵を描き、逆にプレゼントしてくれました。

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とおるくんの弟、あらたくんは、お兄さんやお姉さんの部屋に入ると、ぱっと絵本を手に取りじっと眺めています。カラフルな色使いが目を引いたのかもしれません。別の絵本を手に取ったり、ずいぶん絵本が気に入ったようでした。

昼食は、野外のテーブルで、ベトナムの子どもたちといっしょにご飯を食べます。春巻きや、少しスパイスのきいた野菜炒め、えびや魚入りの海鮮スープのフォーに、ジューシーなパイナップルやスイカなど、ベトナムらしい料理が盛りだくさん!!ここでは、とっても優しいベトナムの子どもたちのホスピタリティに触れることができました。

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お皿に料理を取り分けてくれるのはもちろん、お皿が空になったのに気づくと、すかさず再び料理を取り分けてくれます。スープはテーブルにコンロを置き、目の前で調理をしてくれたのですが、野菜や海鮮を手際よく鍋に入れ、ころあいを見はかり、私たちのお皿にスープを注いでくれます。デザートの果物が運ばれてくると、すぐに楊枝でさして渡してくれます。
14、5歳の女の子たちが、まるでお姉さんのように世話を焼いてくれ、それは私たち外国人にだけではなく、年下の子どもにもそのように、優しく接し、当たり前のように面倒を見ていました。共生施設では、30人もの子どもたちが、兄弟のように生活しています。日本では体験できない、大家族のようなありかた。お姉さんたちにもてなしてもらった子どもたちも、何が感じていることでしょう。

楽しい時間はあっという間に過ぎ、交流時間も終盤。ピースボートの参加者から、感謝の気持ちを込めて、歌を歌うことになりました。曲は『幸せなら手をたたこう』。ベトナムの子どもたちもなんとなく真似をして参加してくれ、和やかに交流は終了。

しかしそこで、ないきくんからもう一曲歌いたいとリクエストが!!数日前に保育園で何度か歌った曲を気に入り、お母さんにも何度も歌ってあげていたそう。そのおかげで歌を覚えたお母さんとないきくん、保育士の3人で、『地球儀のうた』を歌いました。

「♪きたアメリカ、みなみアメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、なんきょくもあるよ、オセアニアもあるよ、みんながすんでる7つのたいりく、ちきゅうのなかまだよ♪」

この曲、深津高子さんが国境線のない地球儀を指さしながら、子どもたちの前で歌ってくれたものです。ないきくんは初めてきいたときからこの曲を気に入り、「もう一回!!もう一回!!」と何度も歌っていました。大きな声で歌いきったないきくん、とても誇らしそうな顔をしていました。

実はこの曲、英語バージョンの歌詞もあります。ないきくん、この大好きな歌を、英語でも歌えるようになりたい!!と意気込んでいます。

別れを惜しみながら、またね、元気でね、と子どもたちと別れ、次に向かったのはハン市場。東南アジアの市場独特の香りが漂う市場には、野菜や果物、豆類、香辛料などの食料品から、洋服や雑貨などのおみやげものがいっぱい!!所狭しと並んでいます。
野菜や果物の山を見ながらりほちゃんは、「あれきゅうり!!これはオクラ!!」と知っている野菜の名前をどんどん挙げていきます。同じ野菜でも、日本の物と形が違ったり、色が違ったりとさまざまですが、りほちゃんはその違いにも敏感に気づきます。「このパイナップルは小さい!!これは色がうすいねぇ!!」などと発見する度に嬉しそうに声をあげます。

市場には生きている魚やカニも売っていました。なかなか見ることのない光景に、りほちゃんも大興奮!!「あっ!!動いてる~!!」と大きな声を出して指差します。近くで見てみようよ、と声をかけたけど…やっぱり怖くて全身で拒否(笑)その後、さばかれた魚を見ることもできました。
「りほちゃんがいつも食べてるお魚も、お船のレストランで出てくる料理のお魚も、こうやって生きたお魚をさばいて料理して食べてるんだよ。」というと、神妙な面持ちで何か考えているようでした。

実際に、生きた魚がさばかれる様子を見るのは、最近では大人にだってカルチャーショックです。切り身のお魚やお肉しか並んでいない日本のスーパーでは、なかなかいのちは見えてきません。子どもたちだけでなく、親にとっても貴重な、市場ならではの経験ができました。

帰りのバスでは、疲れてうとうとしていた子どもたち。でも、ツアーリーダーの、「みなさん今日は楽しかったですか?」というアナウンスに、間髪入れずに「楽しかった!!」と答えたないきくん。ベトナムでの一日が、ないきくんの心に深く刻まれたと感じました。

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